短編

□怪奇
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目を開けると、二ノ宮透次が寝ているベッド脇に俺は立っていた。
ここどこだろう。
はてなマークを頭に浮かばせ辺りを見渡した。
おそらく病院。
一人部屋で隔離されているかのような空間。
机の上には空の花瓶。
2つのパイプ椅子。
生活感が感じられず殺風景。

「アイツ等が見舞いに来るなんてないよな。兄妹って何なの?」

あきれてため息をついた。
それより、俺は43時間でやり残したことをやる。
まじまじと自分の顔を覗いた。
鏡で見る自分と他人の目から見られる自分の顔は違うと聞く。
本当か……?
写真で本当の顔を見ても、ちっともワクワクなんてしない。
これは、俺が死んでから確かめたかった1つだ。
俺は鬼気迫る境遇に位置しているが、幽体離脱していることを心底楽しんでいると思う。


「ほう」

あごをさすった。
まつ毛って意外と長い。
やっぱり鼻は低い。
耳の後ろにホクロ発見。
二ノ宮透次の容姿は、本人の俺から見たら貧弱でがり勉みたい。
そんな俺でも内緒で筋トレして、腹は割れてるんだぜ。



顔をしかめたら、戸が横に開いた。


「のんきに寝てやがる」
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