Parallel
□Vampire&Hunter-T-
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『Vampire&Hunter−T−』
蒼い瞳、銀色の髪、端正な顔立ち、・・・鋭い牙。
危険だと、逃げろと俺の本能は告げている。
だが、妙に高揚した気持ちと、ヤツから放たれる人を魅了するオーラに、足を動かすどころか指すら動かせない。
――コツン、コツン・・・
一歩、また一歩。ヤツと俺の距離は狭まる。
ヤツの首に提げてあるクロスが月光を受け反射し、妖しく光る。
それはこの奇妙な空間をより一層異質なものに仕立て上げ、背筋がゾクゾクした。
「おい」
気付けば、ヤツはもう目の前にいて。
そ、と俺の首にすらっと長い指を添えた。
ヤツの指は氷とは違った冷たさを持っていて、ゾク、とした。
「なんですか」
真っ直ぐヤツの目を見て応える。
ヤツは驚いたように目を見開き、やがてニヤリ、と口端をあげて笑った。
「ククッ、いい目じゃねぇか。」
そういうとヤツは俺の首から指を離した。
「血を吸わないんですか・・・?」
ピク、とヤツの眉が微かに動いた。
俺の言葉の意味を察したのだろう。
ヤツは人の生血を啜る気高き魔物。
吸血鬼《ヴァンパイア》と呼ばれし者。
「そういうお前は俺を殺さないのかよ。
なぁ?日吉家の猟人《ハンター》。」
眼力《インサイト》か。
俺は動揺することもなく、ヤツを睨む。
「あなたは、殺されたいんですか?
跡部の血統の吸血鬼ともあろう者が。」
短剣をヤツの首に突きつけ、笑みを浮かべる。
もちろん、ヤツは殺される気などないだろうし、俺も殺す気など毛頭ない。
「殺されたいんですか、か・・・。」
ポツリ、とヤツは呟いた。
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