12の雨
□Rain in April.
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――4月の雨は、暖かな日差しとともに。
「春だな。」
「春ですよー。」
窓の外、
ビルのそばでさえ、桜は色づき、競うように咲き誇っている。
「高梨さんも歓迎会参加しますよね?」
「いや、…今回はやめておく。次のプレゼンの準備もしたいし。」
「じゃあ、私も出るのやめよーかなー。」
デスクに伏せた後輩を見る。
髪留めは桜と同じ色だ。
「中谷は出て。俺の代わり。」
文句を言う後輩に苦笑を返し、デスクを離れる。
こんな日は少し、外の空気に触れていたい。
誰もいない屋上で一人、たばこを吹かす。
ふと、
コンクリートの隅に咲く、
一株のタンポポを見つけた。
「こんなとこでも咲くんだな…。」
呟くと同時に、
降り始めた雨。
コンクリートの上に、一つ一つ小さな染みを作っていく。
明るい日差しの中で、
「恵みの雨か…。」
黄色い花を包みこむように。
4月の雨は、ただ静かに、優しく降り注ぐ。