朧霞に胡蝶蘭の囁き
□花枝に迦陵頻の舞―中編―
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「よ〜し!!」
突然望美が立ち上がり、そう意気込んだ。
何を言うかと思って全員が見上げれば、望美はにっこりと笑って言った。
「九郎さんのところに行こうよ。」
***
京、神泉苑。
下鴨神社に負けず劣らず、美しい桜が花を開花させている。
それに見とれている胡蝶をやや強引に引っ張りながら、忍人は望美の背に続く。
将臣は何故か中にはこなかった。
ものすごい人の数に、忍人のため息は止まらない。
「九郎さん!」
望美は目的の人物、九郎を見つけると、駆け寄って行った。
「ああ、おまえ達も来たのか。見ていくだろう? 席を用意させる」
「うん」
話がどんどん進んでいく。
胡蝶は忍人に言った。
「忍人殿は、舞は初めてご覧になりますか?」
「ああ。宴の時も大体抜け出していたからな」
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