街界編

□prologue 心臓の拍動
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暗いのは心で、
明るいのはこの世界。

黒いのは脳内で、
白いのはこの空間。



ああ、自分という存在は、いったい何時から此処に存在し、いったい何時まで此処に存在し続けるというのか。



罪の子。堕落させられた命と体。
思考さえ許されないこの真白なだけの空間で、記憶だけが更新されていく。

代わり映えしない、白ばかりが。

言葉さえ知らぬ自分がどれだけ惨めか。そんな事すら分からずに。







人の温もりさえ知らぬこの肌に、なんの意味が有ろうか。

人の声さえ聞く事が叶わぬこの耳に、なんの意味が有ろうか。

人の姿さえ映す事が出来ぬこの瞳に、なんの意味が有ろうか。

自分という存在は、背に生える翼が傷付けば、羽ばたく事すら出来ないのか。



ああもし、この肌に触れる者がいるならば、




















世界は音を立てて崩れ落ち、狂いそうな真白は衝動と衝撃に掻き回された。

孤独に震える鼓動を赦された時、僕のこの歪な心さえも許されるような気がして。







「――…オハヨウ、俺の憎くて愛しい天使様」







ふざけた世界は、一瞬にして色を変え、鮮やかかつ華やかに彩られる。

さぁ、その境界をぶっ壊そうか。















世界は音を立てて崩れ落ち、自分という存在に触れたのは、荒々しく優しい、彼の人の体温。

細胞、骨の髄。脈動する鼓動、心臓、肉体とその全ての中身に至るまでを、




「何時か‘殺し’に来るから、俺という存在を忘れずに待っててね?」




その何時かまで、僕は貴方とサヨナラ。初めて知った感情は、きっと‘恋’。

ああ、はやく来てくれないと我慢出来ない。愛しさが溢れて狂いそう。


だから早く、愛しに来て。


それが貴方の愛だというならば、貴方を想い拍動するこの心臓を、貴方が抉り出して、貴方が壊して。


だからお願い。――俺を見てよ。
















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