土銀テキストVer2

□40. タイムカプセル
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 過去を思い出すことは、銀時にとって微妙な苦痛を伴う。
 人の死、屍を乗り越える。
 そのまま、死ぬ事ができなかったことを後悔しているのかと問われれば、否というしかない、死ぬ事は生きることより簡単で、簡単だからこそ選べなかったのだ。
 世界を壊したかった。
 壊せるものならば。

 どう足掻いても壊れないのだと実感してしまったときのあの絶望を銀時は忘れられないでいる。
 生きること。
 生きなければならないこと。

 だから、実際銀時は、まだ世界を怖そうと足掻く彼の幼馴染みと、世界を救おうとする彼の幼馴染みが時折羨ましくて仕方がない。世界にとって、どれほど自分が小さいのか、気づいていながら目を背けた自分には、もう、手のひらからこぼれ落ちる命を最後の一滴まで見届けるしか許されていない。


「タイムカプセル?」
「ああ。十年ほど前になるかな」
「そんなの埋めたの、おまえら」
「仕方ねえだろ、成り行きなんだから。そういうの流行してたしな、つっても50年先なんて生きてるかどうかもわかりゃしねえんだが」
 
 煙草をふかしながら、土方は銀時を抱き寄せる。万事屋のソファーでわざわざひっつくこともないのだが。

「おまえは?」
「そーいうハイカラなもん、俺の時代にゃなかったなー」
「ふうん?いや、まておまえどんだけトシごまかして生きてンだよ」
「1巻と4巻で倍くらいとしとったくらいにゃ」
「わかんねーからそういうの!」
「まあいいやそのへんは。俺んときはさ、そういうのマジでなかったの。未来なんて考えるほど大人びてもなかったしな」
「へえ」

 そんなもんか、と土方が呟く。
 未来。
 それを信じられる土方は、純粋に生きてきたのだと思わせられる。タイムカプセルは、未来を信じる者だけが埋められる希望のパンドラの箱。
 銀時たちは、未来をろくに信じていなくて、むしろ未来なんてものはなくてもいいと思っていたから、その未来に向けてメッセージを送るなどこれっぽちも考えなかったのだった。

「何書いたの、おまえ?」
「忘れた。ああでも自分へのメッセージだかなんだかそういうのだったしな、いまでもあんまりかわらねえな」
「今、50年後の自分に送るなら?」
「テメェと一緒にいるかどうか、かな」
「どんだけ恥ずかしいのおまえ」

 苦笑して、銀時は身を捩った。




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