土銀テキストVer2

□38. 再会
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「あれー、久しぶりじゃねえか。うんうん、何だよ、そういうことなら早めに言ってくんねーと。今日?いや、今日は忙しいんだ。そうだな、明後日くらいどうよ?」

 うとうとと、土方は向こう側で聞こえる銀時の声に耳を向ける。レトロな黒電話、その受話器の向こうに、銀時が屈託なく声をかける。
 普段の彼とは、酷く違う声。

「つうかおまえな。あいつに余計な知恵つけんじゃねーよ。ああん?知ってンだからな、つなぎつけたのテメーだろ。だいたいな、あいつにおもちゃ持たせたらどうなるかなんてわかりきってたろうが?おかげでえっらいめに合ったっつーの。あー?なんだよだったら俺んちにも援助のひとつもしろっての」

 知り合い、だろうか。
 土方はゆっくりと寝返りをうった。
 銀時のいない布団が、妙に冷たい。
 先ほどまで、抱き合っていた、のに。


「はは、まあいいんだけどよ?ああうん…いまはな、ちょっと。………そういうネタははえーんだな。いいんだよ、んなこたあ。テメーみたく病気うつされたりするような相手じゃねえんだからさ、……珍しく、ね」

 眉を潜める。
 電話の相手は男だろう、しかも、旧知の。
 土方の知らない相手だ、というよりは、彼は銀時の交友関係をほとんど知らない。かぶき町に来てからの彼すらろくに知らない、何故、万事屋を開業するに至ったのか、どこの出身で、何をしてきたか。

「だから。テメーに言う必要なんてねえっての、だいたいな、テメーだってこないだの…ああもういいんだって。その話はテメーが悪いんだろうが?そうじゃねえって、ったく相変わらずだな、3年ぶりだってのに」

 さんねん、と土方は呟く。
 万事屋を開業して、五年だと言っていた。
 それから計算しても、土方と出会うより遙かに前の知り合い、ことによると、恋人、だったかもしれない、相手。

「いま?……そうだよ、悪いかよ」

 言いよどむ銀時の、声。

「あーもーうっせーな。はいはい、テメーの揶揄は一度で懲りた。テメーのこったから見当ついてんだろ、わざわざ狙ったのかよ?いいだろ、切るぞ」

 ったくしょうがねえな、と言って、乱暴に受話器を置く音がする。ほどなくして、銀時が戻ってくる、いつの間に着替えたのか、普段のシャツを羽織って。

「あれ、起きてたの」
「誰だ」
「昔馴染み。しばらく宇宙に行っててな、久しぶりに戻ってくるっていうから」
「ふうん?」
「おい」
「あ?」

 不機嫌になったのがわかったらしい銀時が渋面をつくって土方をのぞき込む。

「おまえのその考えは根っこから捨てろ」
「は?」
「あの電話の相手が俺のモトカレとかなんかそーいうこと考えたろ」
「・・・・考えた」
「それな。百パーセント違う」
「その根拠は」
「じゃあ聞くが。テメェは昔、あのドS皇子と何かあったのか?」

 総悟と、と呟いて、土方は全力で眉根を寄せた。

「……絶対にない」
「それと同じくらい、ない」
「成る程な」
「おまえがコレ信じないってなら、俺もそれ信じない」
「信じる」
「ん」

 そのくらいの間柄、と銀時は言って、土方の隣にもう一度潜り込む。


「嫉妬すんなよ」
「無理だな」
「テメーが俺を好きなように、俺もテメーを好きなんだからさ」
「・・・・・」
「二度は言わねえ」
「言え」
「言わね、っての」

 馬鹿。

 笑って、銀時は口づけをせがむ。

 くちびるを重ねて、もう一度抱き合った。



 おわり

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