土銀テキストVer2
□34. 熱風
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唇が熱いのは、いつもより甘いから。
唇が冷たいのは、いつもより優しいから。
そんなことを考えながら相変わらず煙草のにおいだけを孕む彼の唇が重ねられるのを銀時は楽しんでいた。
女とは違う、薄い唇は、女以上に銀時を甘やかす。銀時の好みとは違う煙草のにおい、それも既に銀時の身体になじんでしまった。
酷く不愉快だった出会いから随分になる気がするのに、本当はまだ一年にも満たないのだと、あのときからまだ半年もたっていないのだと考えれば、時間というものは随分と不似合いな距離感を保っているものだ、と熱い舌先から零れるやわらかな吐息を絡ませながら、銀時はそっと息を吐くのだった。
「おい?」
「なに」
「何考えてる?」
「んー・・・」
説明のできる事柄ではない。
時間と距離と甘さとずるさと。
そういったことを考えていたのだと伝えたところで土方はいつものように唇をとがらせ、眉間に皺を寄せるだけだろう。良くわからないことを言うと不機嫌になるのも慣れたもので、銀時は、土方が望むこたえなどないのだろうと思いながら、ぼうっとしてた、と口にした。
「ごめん」
「むかつくんだがな」
「何が?」
「テメエのそういう態度が」
「そう?」
「俺にはわかんねーだろ、って顔だ」
あたってる、と銀時は苦笑する。
土方は銀時を理解しない。理解しようとしない。理解を試みた結果、納得ができないなりに尊重しようとしているのだろうが、それは銀時にはありがたくもあり、面白みがなくもあり。
つまりはすこし切ないのだった。
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