土銀テキストVer2

□33. Dammy
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「小指がさあ」
「あん?」

毛布にくるまった銀時が、顔だけ出して土方を眺める。シャワーを浴びて戻ってきた土方は、服を着るより前に煙草に手を伸ばした。

「痛いんだけど」
「意味わかんねー」
「なんだ知らないの」
「何が」
「世代か」
「何がだよ?」

暗喩ほどわかりにくいものはない。土方はしたり顔の銀時に渋面をつくった。彼は時々土方にわからない言葉で翻弄する。
「説明」
「んー、いや別にたいしたことじゃないっていうか、わかんなかったらいいんだよ」
「おい」
「つまんないだろ、種明かしってのは?」

指先を出して、折る仕草。数を数えるようによっつ、小指を立てて、苦笑する。

「言えよ」
「んじゃこっち来たら?」
「チ、」

毛布の上から抱き締める。肉付きの良い体は土方の腕におさまった。小指にくちづければ、銀時はくすぐったそうに目を細めて、指出して、と土方を誘った。

「あん?」
「痛いわけよ、こう」
「痛、」

小指を噛まれて、土方は軽く唸る。

「なんだいったい」
「小指が痛い、てね。指切りのあと、ってやつ」
「わかんねー」
「だろうね」

軽く指を絡めて、ほどく。
土方の口元に与えられた小指を、同じように噛んでやれば、銀時は眉根を寄せて、痛、と呟いた。

「貴方が噛んだ小指が痛い♪てね」
「あん?」
「そーいう歌があんの」
「ふうん?」
「なんか切ない感じでさ?小指が痛いわけ。貴方が噛んだ小指。」

側にいない。
だから、記憶を辿る。
小指の痛みだけが残る。

「意味がわかんねー」
「だからさ。説明しねーから、察しろ」
「チ、」

痛みしか残らない相手。
痛みを残してくれた相手。

側にいないから痛みを大切にして彼がいたことを思っていて。

つまりは側にいてほしいと思ったんだ、なんてことが土方に通じるはずもない。


「結局なんだ」
「…こーいうこと」


かけらほども理解しない土方に諦めたのか。

銀時は物憂げに腕を伸ばして、土方を引き寄せたのだった。





おわり

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