土銀テキストVer2

□40. タイムカプセル
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 銀時とともにいるかどうかなんて。
 土方らしいといえばらしいけれど。

「俺と一緒にいなかったらどうすんの」
「一緒にいてーからな」
「いつまでも?」
「ああ、いつまでも」
「女だったらプロポーズだぞ」

 一緒にいたい、と土方は時々口にする。
 そのまっすぐな心根に銀時は尻の下がむずがゆくなるような微妙な気持ちになってしまう。
 彼の幼馴染みもまっすぐで、時々閉口したけれど、彼らのそれは銀時に向くものではなくて、だから銀時は彼らを対岸の火事さながら眺めることが出来たのだ。
 いまは、視線がまっすぐ自分に向かう。
 抱き寄せられて、髪にくちづけられる。
 その、煙草の香りは銀時の肌に既にしみついている。

「女でなくても」
「いや、無理だって」
「籍を入れようって話してるわけじゃねえから」
「だれがそんな話してるんですかアアアアア!ちげーだろ、嫌だよ俺は、坂田十四郎なんて名前のテメエは!」
「あん?」
「なんだよ」

 土方が渋面をつくる。何を間違ったかと銀時が首を傾げれば、彼はそうじゃねえだろ、と冷静に突っ込みをいれる。

「土方銀時、だろうが」
「あ?おまえふざけんなよ、俺が嫁みてーじゃねーか」
「だったら何か、俺が嫁か?」
「・・・・・・それはなんか違う気がする」
「だろう?」
「じゃ、入り婿」
「婿?」
「いや、だからそーいう話じゃねえっつの」

 はっと気づいて、銀時は慌てて土方の腕から身体を引き離した。ピロートークにしても情けない。男同士で結婚するのしないの入籍がどうこうと。
 そもそも戸籍を弄るなんてことを銀時は考えたことがなかった、そういえばいま、自分の戸籍はどこにあるのだろう、とも。

「タイムカプセルだよ。そう」
「じゃあテメーは何いれるんだよ?」
「へ?」
「未来の自分に。五十年後の自分」
「そうだな・・・・」

 生きていれば老人だ。
 想像したこともなかった、昔は、長生きすることを考えなかった、いつまでも幼いままでいられないと知ってから随分になる。
 色々失った、色々手にした。
 
 土方を、知った。


「俺に、じゃなくてさ」

 思いついて、銀時は笑う。

「五十年後のおまえに、だったら何か残せるかもな」
「俺に?」
「五十年後の、おまえに、な」
「何を?」
「・・・そりゃ、タイムカプセル開けてからのお楽しみだろ?」
「チッ」

 はは、と銀時は笑った。
 ふて腐れる土方が、手を伸ばして彼を抱き寄せる。

 その温もり。

 それを五十年後まで覚えていられたらいいのに、と銀時は思って。

 煙草のかおりのする彼の腕に抱かれた。



 おわり
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