土銀テキストVer2
□47. キューティ
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「バレンタインなんてとっくにすぎましたけどー」
「知ってる」
「俺ももらったぞ、今年は」
「へえ?」
「・・・・4つかな」
「やるじゃねぇか」
「おまえに言われても嬉しかねーんだけど」
「ふん」
土産物はチョコレートケーキ。
どん、とテーブルに1ホールおかれて、既に銀時はそわそわしてしまう。なんやかんやと甘い物には弱いのだ、それを持ってくる相手には罪がない。
「おまえからもらってない」
「チョコレートなんてもったいなくてテメーにやる義理はねーな。だいたい、山ほどもらってんだろ」
「まーな」
「俺からのチロル一個加わったところで、どーってことないような気がする。そんくらいなら俺に持って来いよ、食ってやっから」
「って前にも言われたな」
「おうよ。で、このケーキは?」
「そこの角のケーキ屋でな、ひとつだけ売れ残ってたんだ」
「ふーん?」
「なんだか不憫でな。どうせテメーが食うかと思って」
「珍しいこともあるね」
まーな、と土方は煙草を吸った。
以前は煙草がイヤだった。いつでもどこでも煙草をふかす土方に苦言を呈したこともある、けれど最近は、煙草を吸っていればトッシーではないと認識できて、銀時は密かに安心するのだった。
「チョコレートなんて見るのもイヤなんだけどな」
「うらやましいこった」
「まぁ、それでもたまには食いたくなるんだ」
「そんなときどーしてんの」
「・・・・最近はここに持ってくりゃいいと思えるから」
「なるほど?そのお相伴にあずかれるわけだ。コーヒーでいい?」
「ああ」
ちょっと待ってて、と銀時は台所に向かう。
果物ナイフをくるりと回して、ひょい、と投げる。
「おい!!!!!!」
「なに」
「あぶねーだろ!」
「受け止められるだろそのくらい」
「・・・・テメ・・・!」
土方はちゃんと白刃取りしている。
何が不満だ、と銀時は笑った。
勿論、眉間を狙っている。
「自分の食うぶん切っとけよ」
「くっそ、バカにしやがって・・・・」
インスタントコーヒーをいつものマグカップで。
銀時は牛乳をすこし入れる、今日はケーキがあるから、砂糖はいれない。
マグカップを持って行き、皿を再び取りに行く。
銀時には四分の一、土方には八分の一。
きっちり切り分けられたものが用意されていた。
「おまえそんだけでいーの?」
「いい。残りはおめーらで分けたらいい」
「そーだな、帰ってきたらね、あいつらが。・・・・っと、」
「ん?」
ふと気付いて、銀時は新しい皿を取りに行く。
八分の一を取り分けて、ラップ。
「新八のぶんは別にしといてやんねーとあいつ食いっぱぐれることが多いから」
「なるほどな」
「いただきまーす」
「おい、俺に礼は?」
「・・・・礼?」
「ここに」
「・・・・・バカだろおまえ」
唇に、触れる。
土方がこんなふうに甘い仕草を求めてくるなんて滅多にない。
しかも、真剣な表情で。
銀時は苦笑しながら、ケーキの皿を持って土方の正面から隣に移動した。
「キスでいいの」
「とりあえずな」
「そのあともあんの」
「勿論だろ?」
「・・・・まぁ、ひさしぶりだし、ケーキあっし」
「半額だけどな」
「俺をそれで買う?」
「ともいう」
「・・・・安いな俺」
「不満か?」
「ちょっとね」
キスを交わして。
銀時は、笑った。
おわり
20100221