□声を失くした鳥の末路
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†声を失くした鳥の末路†




とある暑い夏の日。


暑い暑いと(実際は逆さ喋りで)呟きながら白鷺は蝙蝠を枕にして寝転んでいた。
暑いならどけと枕にされた蝙蝠は最もな事を言う。
嫌だと短く一言で返し、白鷺はぼんやりと外を眺めた。
忍者といえども暑いものは暑い。感じないと我慢出来るは違う。
そう思った白鷺の心を知ってか知らずか、先日気休めにでもなればと吊るした風鈴が軒下で音を立てて揺れた。
涼しい。と感じたのも束の間で、すぐに蒸し暑い空気が包む。
蝙蝠は相変わらずぼんやりとしていて、白鷺は苛立たしげに目を細めた。

暑い。暑い暑い暑い。

少し大きくなった白鷺の声に今度は蝙蝠が苛立たしげに言う。

煩い。煩い煩い煩い。

子供の様な言い争いは暫く続いたが、凛、と鳴った風鈴に止められた。

暑い。煩い。

一言ずつ言って、どちらともなく唇を重ねた。
触れて舌を絡めて。
お互いに貪る様に口付ける。
息が限界になった辺りで口を離した。終わる時は呆気ないものだと白鷺は頭の片隅で思う。
暑いんじゃなかったのかとにやにや笑う蝙蝠に言われ、白鷺は煩いと返した。


凛と音だけは涼しげに風鈴が鳴る。


暑苦しい服はお互い脱ぎ捨てて全裸。
大して焼けてない蝙蝠の肌に白鷺は舌を這わせる。
首筋に鎖骨の周りに幾つか紅い痕をつけた所で止めろ、と軽く頬をはたかれた。
お返しだと蝙蝠は白鷺の首に噛み付く。痛いと言って白鷺は頬をはたき返した。此方は痕にはならなかったのだけれど。
痛いなあとけらけら笑う蝙蝠の首筋に白鷺は痕を更に増やす。
止めろって言ってるだろ、と蝙蝠は笑った。(今度ははたくなんてしなかった)




凛と鳴った風鈴に少しだけ理性が引き戻された。
蝉の鳴く音が煩くてでもそれより自分の下から響く水音が煩くて白鷺は顔を顰めた。
何でこんな事してるんだっけか。そう思ったが気持ち良いので気にしない事にする。
下で喘ぐ蝙蝠の指が畳を引っ掻く。畳に傷がつくなと何となく思って、それもやっぱり気にしない事にした。(面倒臭い)
不意に途切れ途切れの声で白鷺、と呼ばれ、ほとんど反射で蝙蝠、と返す。
自分に向けて伸ばされた蝙蝠の腕を白鷺は掴んだ。(熱い!)


背が反って。
爪先がぴんと伸びて。


喉の奥から絞り出した二人の細い声はお互いの口の中に奪われた。




嗄れ果てた声も愛し君に捧ぐ。




声を失くした鳥は抱き合ってただ眠りに落ちる。







†END†

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