捧げモノ
□雨宿り
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「何て顔してんだっつーの、白鷺」
笑顔が地顔じゃないかと思わせるこの男は、いつもと変わりない笑い顔で人の顔を覗き込んできた。
暗い空と重い雨。
激しく落ちてくる水滴におれ達は行く手を遮られている。
雨宿り
数刻前、暇に暇を重ねたように暇だったおれは、同じく暇と暇を掛け合わせたように暇そうだった蝙蝠を連れて散歩に出た。
何となく雲行きが怪しくて、大気も湿っぽいといういかにも梅雨気候だったが暇は何にも変えれない。
おれと蝙蝠と人鳥以外は珍しく全員仕事中。さっきまでは蝙蝠と人鳥を探してたけれど、何故だか何処にもいねぇ。本当に隠れるのが上手い。こういう時だけ川獺の野郎が役に立つってのに、仕事で居ないとかムカつく。
本当に使えない奴だ。まぁ、ウザいから居なくて良いけど。
兎に角散歩に出て予想通り雨に降られた。でもまさかここまで降ってくるなんて、誰が思うんだっつーの。
実際梅雨の時期に入ってまともに雨が降ったのはこれが初めてだ。それまで雨も降らずにじめじめとやけに湿気が多かっただけだった。
蝙蝠もそれを感じてか「おれ等って結構運悪いんじゃね?」と嬉しそうに言ってる。何故嬉しそうなのかは不明だ。