□ふわふわり
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子供が三人、岩の側にしゃがみ込んでいた。
川獺は記録の中にいた。
否ーーー想いの中にいた。
さっきまでと変わらぬ風景。
あぁ、この時も卯月の中ごろだったのか。
川獺はそう思いながら、さっきまでの風景にはいなかった子供達ーーーー想いの住人を見た。
あまりにもはっきりとその姿が見える事に川獺は驚きを感じていた。普通、記録を読む時はどこかが霞んでみえるのだ。

子供達は楽しそうに地面に穴を掘り、そこに今川獺が大事そうに抱えている箱と同じものを入れた。
笑い合いながら。
幸せそうに。

川獺は彼らを後ろから見ていた。ただひたすら見ていた。

と、笑っていた一人の子供が振り返った。
その大きな瞳が川獺を捕らえたようにみえた。
一瞬、川獺は息を飲んだ。
ここは想いの中であるというのに。
自分は何を期待しているのだろう。
それでも川獺は見つめ続けた。その瞳に自分が再び映る事は二度とないのを分かっていながら。

風が吹いた。
想いの中なので川獺にはその風は感じられない。
二人の子供は箱を埋めにかかったらしい。
子供達が霞んでくる。
最後まで見つめていたくて、最後まで見つめていてほしくて。川獺は箱を強く抱きしめた。
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