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以下は、another world〜儚き少女の場合〜の続きです。
†episode.4 罪にまみれても叶えたい願いがありました。
マフィア・ボンゴレの次期ボスと目される少年――沢田綱吉は、日本の並盛という町に住んでいた。
その隣町である黒曜町の、黒曜中の生徒によって、並盛中の生徒が次々襲われる事件が相次ぐ。犯人の狙いが自分だとわかったツナは、仲間と共に犯人の元へ乗り込み――今まさに、その犯人、六道骸を撃破した所だった。
倒れ意識を失った骸を、死ぬ気の炎を消したツナはどこか複雑な顔で見つめる。
マフィアへの憎悪を露にし、酷薄な笑みを浮かべていた骸が、そのどす黒い闘気を死ぬ気の炎に浄化された瞬間、どこか遠い、虚ろな目である名を呟いたのを思い返す。
「……聖って…?」
口にしながら、骸が死んでないか不安になり、足を踏み出す。
その瞬間、声が飛んできた。
「近づくんじゃねえびょん!!それに、その名前を口にすんな!!」
満身創痍でありながら、ずるずると這いつくばり骸の近くへやってくる、犬と千種。
何故そこまで骸を庇うのかと問うツナへ、犬は言った。
地獄の日々、それを救い出してくれた双子の存在。
何より、骸の妹である聖のために、負けられないのだと――。
「オレらが守りたかった居場所を取り戻すんだ…それを、おめーらに壊されてたまっかよ!!」
必死の形相だった。
骸の双子の妹は、今も身の内の脅威と戦いながら眠り続けているらしい。
大切なもののために負けられないのだろう。
でもそれは、ツナだって同じだ……。
「…でもオレだって、仲間が傷付くのを黙って見てられない……そこがオレの居場所だから」
悲痛な声、だった。
哀しすぎる彼らの過去が、理由が、あまりにも辛い。
ツナが奥歯を噛み締めたその時――ぴくりと、骸の身体が動いた。
「……ありがとう、千種、犬」
起き上がる骸。
ぎょっとしたツナとリボーンに緊張が走ったが、
「――もういいの。ごめんなさい…」
骸の身体に被さるようにして、透明な別人が見えた。
幽体のような何かが、骸と二重に見える。
普通だったら悲鳴を上げそうなものだが、ツナは呆然と見ていただけだった。
「ごめんなさい、私のためにたくさん、傷つけちゃったね……」
「――聖、様…!!」
「どうして…」
骸とよく面差しが似た、長い藍色の髪の、前髪で左目を隠した美しい少女だった。
悲しい微笑を浮かべた少女は、犬と千種へ歩み寄ると、二人の頭を撫でた。
あれほど酷かった傷が、少しずつ癒えていく。
「聖様!力を使ったら駄目ぴょん!聖様!!」
「…やめてください…!!」
「――私、ずっと寝てたの。寝坊しちゃったから、これはお詫び」
ねえ、二人共。
「私、貴方達と骸が――大好きよ」
ぱちん、と光が弾けた。
気がつけば、三人は倒れ伏し、ツナ達が見ていた少女はどこにもいない。
やがて復讐者(ヴィンディチェ)というマフィア界の法の番人がやって来て、骸・犬・千種に首輪を掛けて連れ去ってしまった。
千種と犬は涙を流していた。
骸の閉じられた瞳からも、一筋の滴が流れていたようだった……。
その後ボンゴレ医療班は、隣室から、眠るように死への旅路を辿る少女を見つける。
だがしかし、彼女は一命をとりとめた。
「あくまで一時措置だ。根本的な治療にはなってねえ。このままだとあと一年、もたねーだろうな」
「そうか……だが、助かったぞ、シャマル」
「久々のカワイコちゃんだったからなー。男だったら診なかったぜ」
「…変な真似すんなよ」
「病人には手ぇ出さねぇって」
ドクター・シャマル。
裏の社会で有名な、天才闇医者。
彼のお陰で、ギリギリの所で六道聖は持ちこたえたのだ。
リボーンは帽子を深く被り、呟いた。
「こいつはきっと、将来役に立つからな。何とかしてやる」
――彼女が真実目を覚ますまで、まだ少しの時間を要するようだ。