ショートストーリー

□バレンタイン
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俺の名前は桐崎レイム。
まったくもって変わった名前。
この名前と容姿のせいで女子から”レイムくんかわいい”
などと言われるのは日常茶飯事。
だからせめてと”俺”を一人称にしている。
これで”僕”なんて言っていたら完璧に女子の玩具だ。
”俺”って言っていたって、気の強い方じゃないから変わらないんだけどさ。
でも、今日の俺は違う。
いつも玩具にされてるレイムではない。
今日はバレンタイン。
逆チョコが流行っている今年がチャンスだ。
チョコを渡して、そして告白する。
断られるのは目に見えてるけど、こんな機会にしか言えっこないから。
そう思って俺は手作りのお菓子を用意した。
俺って女々しいと思う。
料理が得意だからだ。
姉が男勝りなぶん、姉のかわりに母さんが俺に仕込んだ結果。
名前といい料理が得意な事といい、ついていない。
さて、俺が告白しようとしているのは
同じクラスの女子。
日下みつば
彼女の名前も変わっていると思う。
最初はそれで気になっていた。
けれど、日を追うごとに俺は彼女から目を離せなくなった。
よく見ているとおっちょこちょいなのか、よくつまずく。
それに、どこかに忘れ物をする事が多い。
移動教室で、彼女が去ったあとの机を見れば筆入れが置きっぱなしだった。
もちろん届けた。
そういうことが何度かある。
いつも彼女は”ありがとう”と微笑んでくれる。
俺の事をかわいいと言ってこないのも、よってこないのも彼女くらいで、
俺はそれが嬉しかった。
彼女が帰りにこっそり教室の整理をしている事も、
朝こっそり花を花瓶に入れている事も知ってる。
そんな小さな優しさをもっている彼女に俺は惹かれていったんだ。
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