ショートストーリー

□好きだから
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音楽準備室で自主練をしようと、ドアを開けると
制服を乱され、泣いている後輩と
それを襲っている同級生だと思われる男子生徒の姿が目に入った。
「なっ……」
一瞬絶句するも、俺は後輩である帆紀を助けるために、
男子生徒へと拳を振り上げた。

「なっ!?」
そう咄嗟に反応の出来なかった結雨は床に倒れ込んだ。
それを確認して、暁(アキラ)は帆紀へと駆け寄った。
「帆紀、大丈夫か?」
『…あ、あきらせん、ぱい?』
帆紀は呆然と暁を見つめた。
「大丈夫か?」
そうもう一度、暁は優しく帆紀に問いかけた。
『は、い…。だいじょうぶです。』
「そうか、ちょっと待ってろ」
そう言って暁は、偶然持っていた自分の制服のジャケットを
荷物のなかから取り出し、帆紀にかけた。
そうして、暁は結雨の前に立ち、座り込んでいるのを無理矢理立ち上がらせ
「おい、お前が誰かは知らねぇけどな。
乱暴なまねしてんなよ。
今度帆紀に手出したらさっきくらいのじゃすまないからな、覚えとけよ」
そう言って、廊下の方へと結雨を放りだした。
結雨が去ったのを確認して、暁は座り込んでいる帆紀の前にしゃがんで声をかけた。
「本当に大丈夫か?」
『……』
再度問われたその優しい声に、帆紀は声が出ずに俯いた。
「帆紀?」
そんな様子を見て、暁は帆紀の顔を覗き込んだ。
顔を覗き込めば、帆紀は泣いていた。
「大丈夫じゃないじゃねぇか」
そう言って、暁は帆紀をそっと抱き寄せた。
「辛かったら泣いていい。今は俺しかいないからな。
落ち着くまで好きなだけ泣けばいい」
『あきら、せんぱいっ…』
そう暁を見上げた帆紀は、暁の胸に顔を埋めて泣き始めた。
「………怖かったよな」
そう言ってポンポンと帆紀の頭を優しく撫でた。


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