ショートストーリー

□いつの間にか君を
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放課後の教室。
どうやら眠ってしまっていたらしい。
「好きだよ。」
そんな言葉に、眠りから覚醒し始める。
夕暮れに染まった教室で、
机に俯せた私に覆い被さるように
後ろから机に手を着いている男が言った。
「いい加減気づけよな」
そうため息混じりの声に私は身体を起こした。
「うわっ」
そう、男は私がぶつかりそうになったのと
起きたことに驚いて声をあげた。
「ん?」
そう振り向けば、同じクラスで係りとか班とか、何かと一緒になる葉山 樹(はやま つき)がいた。
「いつき?何してるの?」
聞こえていた言葉を無視して問いかける。
「何って……」
そう口ごもる樹。
今の今まで、こいつに女として見られてないと思っていたのにと
私は少しショックを受けた。
そんなショックを受けている間に、やつは覚悟を決めてしまったらしい。
「雪音、俺、お前が好きだ」
ほら。
やっぱり聞き間違いではなかった。
せっかく聞き流したというのに。
「いつき、冗談?」
そういつもの調子で言葉を返せば
真面目な顔の樹。
本気なのか、そうなのか。
せっかくいい男友達だと思っていたのに。
気兼ねない付き合いだったのに。
だけど…とも思う。
一緒にいて楽しかったのなら、相性はいいのだろうと。
はたして私は彼をどう思っているのだろうか。
そう一人で沈黙していれば、焦れた樹が声をかけてきた。
「おい、雪音?」
いつもよりも弱った顔をしている樹。
本当に好かれてるんだ。
そう思うと嬉しくはあった。
「いつき、気持ちは嬉しいんだけど、
私、男としていつきを好きかわかんないよ」
そう素直に答えれば
「じゃあ」
そう樹が呟いたかと思うと、
唐突にキスされた。
「はぅ?」
突然のことに間の抜けた声を出してしまった。
そんな私に、もう一度いつきは唇を重ねた。
「……//」
「どうだった?」
そう私を見ながら愉快そうに尋ねてくる樹。
嫌ではなかった。
むしろ心地よくて、もっととねだってしまいそうだ。
「き、聞かなくてもわかってるでしょ…」
「そうだね。
そんな顔されたら一目瞭然だもんな」
そうニカッと笑って言う樹。
「でも雪音にちゃんと言ってほしいんだけど?」
そう言われたら言うしかないではないか。
「ぅ……。す、す…好きよ。」
「よくできました」
そう笑って、樹はまた唇を重ねてくる。
「ん…//」
「雪音、そういう声も顔も他のやつに見せるなよ?」
そうキスに酔いしれてポーッとしていた私に樹が言う。
そんな顔ってどんな顔よと思うけれど
「いつき以外の男に、私が気を許すと思う?」
「それもそうか。」
と、私の性格を知り尽くしている樹は頷いた。
「俺も雪音に気を許されるまで大変だったもんなぁ」
「なに、それ」
それは最初から好きで近づいたということ?
侮れないやつ。
そんなことを思うけれども、
「雪音、好きだよ」ほら、そんな樹の一言でどうでもよくなってしまう。
”好きよ”そう私も心の中で呟いて、
樹にぎゅっと抱きつくのだった。




END

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