気持ち〜Heat〜

□真実を
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トーナメントの日はあっという間に訪れた。
もちろん、言うまでもなくユウリは圧勝してしまった。
何せ王国の剣士の中で一番強いのだから。
ユウリは勝ったことを少しも喜んでいなかった。
寧ろ落ち込んでいた。
強さを証明できたことに不満はないのだが、
隣国の王子と戦うこと、その舞台に立つこと
そのことが嫌だったからである。
そのため、ユウリは無理なお願い
いや、話し合いをするために王室に向かっているのだった。
王室に通されたユウリは
単刀直入に、王に言った。
「イヨリ姫様とお話をさせていただけないでしょうか」
王は少し驚いたようだが、
訳知り顔で了承してくれたのだった。
何か勘違いされているようだったが、
この際ユウリは気にしなかった。
ある部屋に通され、数分たった後にイヨリが部屋に入ってきた。
イヨリがとても嬉しそうな顔をしているのを、
ユウリは見逃さなかった。
そして、王宮内だとうのに
「ユウリさま、どうしたの?」
そんな調子である。
内心ため息をつきながらユウリは言った。
「姫様、何故婚約話をお断りになったのですか?」
イヨリはこのユウリの話し方が気に入らなかったらしく、
頬をふくらましながら答えた。
「なんでって。
だって、ユウリに会って気づいたんだもん。
私が姫でもそうじゃなくても、自分の道は選べるって。
それに、好きでもない人と一生を過ごすなんて、
絶対に耐えられないから」
だから・・・と、最後には助けを請うように
真っ直ぐな瞳をユウリに向けるのだった。
ユウリはイヨリの気持ちを変えたのは
やっぱり自分だったことに気づかされた。
それと同時に、イヨリの心を変えようとか
動かそうとか、
そんなことはもう出来ないことを悟ったのだ。
戦うしかないのだということも痛感した。
そして、こんな大騒動を巻き起こした
大元の原因が自分であるという責任を感じた。
責任は取らなければ。
どんな罰が与えられようとも、
これを報告する義務が自分にはあるのだと。
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