あの部屋に
□プロローグ
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ふと見上げたある窓。
何もない殺風景な部屋が見える。
カーテンすらかけられていないその部屋。
空き部屋なのだろうかとも思う。
人の気配はなかった。
だから尚更そう思うものだろう。
少しだけその部屋の窓から目を離し、
私はまたその窓を見上げてみる。
するとそこには人影があった。
さっきまで気配すら感じられなかったのに、
いつの間に現れたのだろうか。
驚きを隠せない私。
そして惹き付けられた。
そんな不思議な、奇妙なことを体験した私は、
確実にその部屋が気になりだしていた。
私の足は勝手に、あの部屋へ向かっているらしかった。
魔法にでもかかったみたいに。
行ってはいけない。
そう理性は告げていた。
けれど足はいうことを聞かずに、
ただ歩き続けた。
そしてとうとう
あの部屋の前まで来てしまった。
ドアに手が伸びる。
と、
ドアに手をかける前に
ドアが開いたのだ。
そこには私と同じくらいであろう青年が
ドアを開けて立っていた。