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□変化の時
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どうしてかわからなかった。
さっき私に告白してくれた紘くん。
その紘くんが後輩を抱きしめていた。
わからない。何にも。
恐くて、紘くんに聞きに行くことも会うことも出来ずに
ただあてもなく校舎を歩いた。
一人になれる場所を探して。
そうしてふと気がついたときに、屋上の隅で私はうずくまっていた。
「紘くん…」
そう小さく呟く。
きっと無意識のうちに何回も呼んでいるのだろう。
今のもほとんど無意識だった。
”紘くんも私より、元気で明るい子が好きなのかなぁ”
なんて考えてみる。
そうやってどれくらいの時間が過ぎたのだろうか、
いきなり屋上のドアが勢いよく開いた。
ふと顔を上げるとそこには紘くんが立っていた。
「紘、くん…?」
「…麗菜、携帯。」
そこで紘くんの携帯を持っていた事を思い出して、慌てて差し出した。
「麗菜、さっきの見た?」
紘くんは、私の隣に腰掛けながら聞いてきた。
「見た………」
正直に答える。
聞きたくないけど、知りたかったから。
「俺の声は聞こえた?」
聞こえなかった。
だから首を横に振る。
「さっきのは…」
そうやって、さっきの出来事の詳細を伝えてくれる紘くん。
「私を…守ってくれるため…だった?」
そう呟くと、紘くんは言った。
「けど何もするべきじゃなかったな…、悪い。」
”分けわからなかっただろ?”
そう言って紘くんは頭を撫でてくれた。
「紘、くん……」
「ん?」
「守って、くれるんだよね…?」
あの恐い視線から。
「あぁ。麗菜のこと好きだしな、絶対に守るよ」
そう紘くんが言ってくれるから。
恐くない。
もう疑わない。
「紘、くん。」
「うん?」
「彼女に、してくださいっ…//」
思い切って言った。
その後はあんまりよく覚えてない。
抱きしめられて、温かくて、嬉しすぎて。
どうやって家に帰ったのだろう?
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