You

□変化の時
5ページ/5ページ

沈黙を破って、紘が麗菜に呼びかけた。
「なぁ麗菜?」
「な、に?紘くん」
「…麗菜は俺と付き合ってる事秘密にしておきたいか?」
そう唐突に紘は麗菜にたずねた。
「秘密にしておいたら…紘くんと一緒にいられない?」
そう麗菜が聞くと
「そうだな…秘密にするなら会いにくくなるから、そうなると思う。」
と紘は答えた。
「だったら嫌。……紘くんと一緒にいられる方が、いい。」
「けど、付き合ってるってわかると、嫌がらせを受けるかもしれない。
俺が麗菜を守る。けど、ずっと一緒にいれる訳じゃないから…耐えれるか?」
と、少し不安そうに紘は麗菜に告げた。
「大丈夫…いじめられたことあるから……」
そう言うと、
「麗菜、それは大丈夫には入らない。」
と辛そうな顔をして紘は言った。
「でも…」
「わかった。出来る限り100%守るから安心して?
けど、何かあったらすぐに俺に言うこと。
いつだって何時だって電話してもいいからな。」
「うん!」
そして紘に促されて、麗菜はお弁当を食べる。
「な、その卵焼きくれないかな?」
と、何となく美味しそうに見えて紘は麗菜にたずねた。
「卵焼き?」
「あぁ。」
少し複雑そうな顔をしてから、麗菜は
「…いいよ。」
と言って、箸で卵焼きをつかんで紘の口元まで運んできた。
内心驚く紘。
けど、そんな事には気がついていないのか、麗菜は
「はい」
と、卵焼きをさしだしている。
驚きつつも紘は口を開けた。
「…美味い!」
今までで一番美味しいと思った紘は素直にそう言うと、
なぜか麗菜が顔を赤くしていた。
「…どうした?」
てっきりさっきのが原因かと思った紘だが、
「私が作ったの…」
という麗菜の一言で理解した。
このお弁当は麗菜が作っているのだと。
「すごい…本当に美味い」
そういって褒めると、麗菜は顔を真っ赤に染めた。
「今度さ、俺の弁当も作ってくれないか?」
赤い顔のまま、麗菜はこくりと頷いた。
その様子があまりにも可愛かったから、
「ありがとな」
そういって紘は笑った。
そうして、緩やかに二人の関係は動き始めた。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ