書棚〜種運命@〜

□kindness×smile=angel?
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「はぁ〜…」
「何の溜め息だ、シン」
「レイ…」

俺が何に凹んでいるか…男が身体測定で溜め息を吐くと言ったら、一つしか無い。

「胸囲は変わらず体重が増えたか」
「そうそう体重が…って、俺は女子かよっ!」
「それだけの元気が有れば問題無いな」
「問題、大アリなんだって…はぁ〜…」

…そう、大問題だ。
この成長真っ盛りの時期に、身長が伸びてないんだから。
1ミリでも良いから伸びていて欲しかった…(涙)

「ヤマト先輩も『身長は関係無いよ』と言っていただろう」
「だから伸ばしたいんだよっ!」

平常授業が始まった途端、朝のお出迎えに始まり昼はランチに強制連行、帰りも待ち伏せてて、部屋だって入学式の日に隣同士に移動させられたせいで風呂は勿論一緒…まるでストーカーじゃないかよ!
それもこれも俺がヤマト先輩より小さくて力が無いせいで…ぅっ、ぅっ…
だから俺の方がデカくなって力も付ければ、こんな事も無くなる!

「あの人、絶対チビフェチだって。自分より小さい物なら何でも良いんだよ」
「その理論ならば、俺でも良いという事になるな。しかし、俺は一度も誘われた事は無い」
「ぅっ…それは…」

そうなんだよな。
新入生には俺より低いヤツなんかゴロゴロ居るのに、ターゲットは俺だけ。
何なんだよ、本当に…

「だから、運命の相手なのだろう?」
「そんな迷信めいた話、信じられるかよ」
「…あながち迷信とも言えないがな…」
「ぇっ?」

レイは時々、意味深な言葉を呟いては気にするなって言う事が有る。
何かを知ってるような口ぶり、だけど答えてはくれない。
まるで、推理ゲームのヒントを出されているみたいだ。

「たまには迷信を信じてみるのも悪くはないぞ」

そう言い残して、レイは次の検査に行ってしまった。
信じてみるったって…運命…一生を共に…結婚…!?
いやいやいやっ、法的に無理だからっ!(汗)
大体、同性と運命って言われて納得するか?!
絶対おかしいって…

「大丈夫ですか?」
「へっ??」

背中に手が当たるのを感じて顔を上げると、俺よりも小柄で童顔な子が心配そうに覗きこんでいた。
明るい緑が印象的でふわっと柔らかそうなクセっ毛、澄んだマロンブラウンの瞳に華奢な手脚。

「ぁっ…ぇっと…///」
「具合が悪いなら保健室にお連れしましょうか?」

一瞬、女の子かと思ってしまった。
そんなはずは無いよな、ここ男子校だし。

「だっ、大丈夫っ。ちょっと凹んでただけだからっ」

しゃがみこんで頭抱えてたから心配してくれたんだな、きっと。
なんて優しい子だ…(感動)

「何か悩み事ですか?良かったら相談に乗りますよ」
「別に大した事じゃないから、本当に大丈夫っ」

身長が伸びないなんて、相談されて一番困る話だと思う。
それも同級生の同じ身長のヤツじゃ余計に…

「そうですか…もし誰かに話したくなったら、遠慮なく相談してくださいね。これ、僕の名刺です」

そう言って差し出されたカードには、ご丁寧に学校名からクラスと名前と寮の部屋番号まで書いてある。
2年C組…2年!?

「すっ、すみませんっ、俺てっきり同い年だと思ってっ(汗)」

思いっきり普通に喋ってたよ〜…(汗)
慌てて頭を下げると、その人は優しく俺を起こしてくれた。

「良いですよ。僕がこんな感じだから、さっきも間違われちゃって」

ニッコリ微笑む姿は、まさに天使。
悪魔の胡散臭い笑顔とは大違いだ。

「ニコル・アマルフィと言います。占いもやっているので、良かったら一度遊びに来て下さいね」
「は…はぁ…」

ニコル…占い…何処かで聞いたような……ああっ!!

「…もしかして、運命の人とかも占ったりしますか…?」
「はい♪」

コイツカァァァァァァァァァァァァァ!!!!!

「…はぁ…」
「ぇっ?」

…この天使の皮を被った悪魔のせいで、俺はっ、俺はっ…くぅっ

「…失礼します…」
「ぁっ、前を見ないと危ないですよ〜」

危ないのはアンタの一言だよ…口に出せない数々の悪態を心の中で吐きながら次の検査室へ向かう背中を見つめる視線に、俺は全く気付いていなかった。


+++


「彼がシン・アスカ…上手く出逢えたようですね、キラさん☆ミ」


-to be continued-
 
 
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