書棚〜種運命@〜

□困惑と不安
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「…んっ…」

小さく聞こえたキラ先輩の吐息に、ゾクン…男の本能が首を持ち上げ始める。
すげ…色っぽい…

「…っ…はぁっ…はぁっ…」

一旦離れると、瞳を潤ませたキラ先輩が俺を見つめていた。
紅く上気した頬が、より一層キラ先輩の艶を濃くして…

「キラ先輩」
「ぇ…?」
「好きなんだ。キラ先輩が、すっげー好き。俺の恋人になって?」
「…ぇっ?///」

天然で激ニブなキラ先輩も流石にこれは理解したみたいで、今度は耳まで真っ赤にして目を見開いた。
そして俯くと、そのまま黙りこんでしまう。

「ぁっ…」

また困らせてる…俺…

「…ごめん、キラ先輩」
「ぇっ…どうして?…」
「俺、キラ先輩を困らせてる…いい加減、呆れるよな。こんなガキみたいなヤツ…ごめん…なさい…っっ…」

ヤバぃっ、泣きそうっ…
キラ先輩には涙を見られたくなくて、急いで立ち上がるとドアを目指して走った。
人前で泣くなんて、本当にガキみたいだ。
欲しいものが手に入らなくて駄々をこねるガキ…

「まっ、待ってシン君!違うんだ!」

ドアノブを握った瞬間、キラ先輩の声が俺を引き留めた。
いつもの穏やかで優しいものじゃなくて。
慌てたような、必死の色を含んだ声が。
驚いて振り向くと、俺を真っ直ぐに見つめるキラ先輩が走ってきて…

「…ぇっ…?///…」
「そんな事、一度だって思ったことなんか無いよ?」
「ぁっ…」
「呆れるなんて、とんでもない…僕、そんな言葉を言ったかな…?」

グイっと正面から抱き締められて、少し高い位置で不安が混じったキラ先輩の吐息が俺の髪を揺らす。

「言ってない…けど、溜め息とか…表情も困ってるみたいだったし…」

甘い、キラ先輩の匂いが鼻をくすぐる。
大好きなこの匂いを、これからも感じていたい…けど、俺はキラ先輩を困らせてばっかりで…

「ぁ…うん。少しだけ困ったことが…ね」
「っ…やっぱり…」
「でも、大丈夫。解決したから」
「…ぇっ…解決?」
「うん。シン君のお陰でね」
「俺…?!」

思いがけない言葉に、伏せていた顔を上げる。
と、優しいラベンダー色に見つめられて、動揺で速く煩かった鼓動が少し落ち着いた。
 
 
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