高校生になった今、中学の頃を振り返ってみたならば、…自分もまだまだ子供だったなと。
色々と未熟だったなんて聞こえは良くても中身は散々だ。
そもそも自分は大人と大差ないとか思ってた時点でもう子供で、そんな思春期真っ盛りな過去を顧みると顔から火が噴き出そうなほど恥ずかしい。
(まぁ今も大して成長なんてしてないんだけど)
思い出そうが出すまいが過去の自分は事実だし、変えようのない現実であって、もう今更どうしようもない。
ただ幸いなことに、そういうのは誰にだってある事だと思うのでそこまで悲観はしない。悲観はしないが、だからこそ今、声を大にして言おう。
( 同じ轍を二度は踏むまい )
もう二度と大切な人を悲しませたくないから…
うるさいのがやってきた
朝一番。
どんなにすがすがしい朝を迎えようと、学校に一度来てしまえばそんな爽やかな気分など一瞬で吹き飛ぶ。
しかも眠りの浅い惰眠を貪って無理矢理起きてきた日なんて特に。
ゲームに身を投じ、夜更かしした自身が悪いと言われればそれまでだけど。
(あ、駄目だだるい)
かと言って、心底楽しかったかというとそうでもなく。そんなある意味暇を持て余す学生らしい惰性のまま、今日もつまらない一日が始まる。
ピカピカの高校一年生、俺、並川浩也(ナミカワ ヒロヤ)の。
キーンコーンカーンコーン
「諸君らおはよう、そして静かにしろ。それが出来ないなら帰ってくれ今すぐに。」
担任教諭がチャイムと暴言と共に教室に入ってきた。
朝特有のざわついた教室内が、ピシッと引き締まる瞬間だ。
その特有の雰囲気に登校してから今の今まで眠っていた意識が少しだけ浮上したが、不摂生な生活を満喫した身体は言うことを聞かず、結局再び机に突っ伏することとなった。
(眠い帰りたい今すぐに)
ワックスで固めた髪を避け、カーディガンの袖に顔を埋めて寝る体勢をつくる。詰襟が苦しいので学ランはイスに掛けたままだ。
「柏木先生、来て早々それはないよ〜横暴横暴。」
「それでも教師ですか。」
入り口付近のクラスメイトが教師に対抗して文句を言っているのが聞こえた。
「…桐谷、浅岡共に欠席、と。」
「「すみませんでしたっ」」
朝から自分の許容範囲を超えるハイテンションなやりとりに余計疲れる。別に朝でなくともついていけない自信はあるけど。
「わかればいい。お前らはもっと自分の立場をわきまえるべきだな。」
(アンタもな。誰だこんなのに教員免許をくれてやったのは。)
理不尽な大人にだけはならないよう気をつけよう、と心に誓いながら更なる深い眠りにつくことに決めた。
今の俺はとにかく眠い。
朝方まで、厳密に言えばついさっきまで国を統一するのに勤しんでいたのだから。
そう心の中でもっともらしい言い訳をしながら、イヤホンを耳にして音楽プレイヤーの再生ボタンを押した。
だから、俺はそのうるさい存在を認知するのが周りより少し遅れてしまった。
「そういうことだから肝に銘じておけよ。じゃあ遠慮なく入って来い、転入生。」
「「「転入生がいんのかよ!?」」」
奴の姿を見ることもなく、すべてを遮断したまま意識は途切れた。
それからクラスメイトがいなくなり教室に取り残されるまで目を覚ますことはなかった。
「はじめまして。渡瀬哲太って言います。夢は甲子園出場!そして当然、甲子園で優勝することです!!」
教室に、目の前にいる見た事のないでかい男と共に取り残されるまで、束の間の惰眠を貪った。
――さぁ、運命の奴と出会うまであと少し