【やや流血注意!
苦手な方はブラウザバックor超高速スクロール!
お題配布元:恋したくなるお題(PC専用)】
「そっちだ!!」
「クソ…月さえあれば…!」
「白夜叉が離れた今がチャンスだというのに……!」
背後に迫り来る声。
気配も消さない愚かさに、哂う。
白夜叉が離れた今――?
銀時がいなければ、私に勝てるとでも?
「舐めたことをする…」
感じる息遣いは10人強。
逆に私の戦法だと、やりづらいか。
しかし出来なくもない。
うまく誘導すれば、彼らはすぐに自分の仲間らを殺し出す。
最悪、それに罪の意識すら感じない頭の悪い集団だ。
「私を殺したいのなら、今度から1人で来ることだな!」
大声を張り上げる。
新月の今宵、雲は厚く星も無く、墨染めの衣を着た私はさぞかし見えづらいことだろう。
だから、主張を。
わたしはここにいる。
「!? くそっ、見えな――」
一人が適当に武器を振りかざす。
狙いは間違ってはいないが…当然私は易々とそれを避ける。
そして、近くにいた別の天人を引きずり出し、その剣に突き刺した。
「グァァァァッ…!!!」
「愚かね…?」
流石に他の天人が事態を察知して、私を取り囲む。
そして、一斉に発砲したり斬りつけて来たりする、が。
その一瞬前に私は上空へ跳躍する。
刃物を武器として接近していた者たちは気づいても成す術はなく、
銃器を持った者らは私が消えたことに気づきもしないで発砲を続ける。
「やめッ…くぁ…!!!」
私を中心として円陣を組んでいた彼ら。
反対側にいた仲間に、弾丸は当たる。
天人の技術が徒を成す。
防具を貫通し肉体にめり込んだことだろう。
倒れこむ音。
相手の荒い呼吸は、疲れのためか、恐怖のためか。
研ぎ澄まされた今の私の耳は、血飛沫の音すら捉える。
…急所にでも入ったか。
空中で身体をよじり、地面に手を伸ばす。
その体勢のまま開脚、地面につけた側の腕を勢いよく捻る。
確実にある肉の感触。
一…二……………、五体。
刃物が地面に突き刺さる鈍い音。
「クソッ…!」
やや離れたところでの声。
残った気配の数は五。
袖口から短剣を取り出す。
あたりをつけ、それぞれの方向へ投げつけつつ、相手の隙間を縫って円から脱する。
「待て、――!!」
甲高い金属音と、逆に肉体に突き刺さった短剣の立てるくぐもった音が混じる。
――二匹逃した。
彼らは追ってくる。
別に体力が尽きたとかそういうわけではないが、適当に走り回るわけにもいかない。
ここは戦場だ、彼らのほかにも敵はごまんといる。
駆けるどの方向にも、辿れないほど多数の気配。
風に乗ってやってくる、濃厚な鉄の臭い。
…味方に手を煩わせるほどの相手でもないのに、敵を引きずり込むのは癪だ。
何より、戦場は微妙なバランスで勝敗が――生死が定まる。
「面倒だが仕方ないか…」
足を間逆に向け、そのまま敵二匹へ突っ込む。
その間に、懐から一対の鉄扇を取り出す。
広げたそれで銃をもった奴らに一気に接近。
斬る。
手に伝わる、柔らかいような硬いような触感。
弾力のある、肉の感触。
一匹は仕留めた。
最後――
「一人で歩き回んな、気が気じゃねェ…」
振り向いたそこには見慣れた背中。
私の今来ているものと似た配色の洋服。
耳によく通る声。
――すべては一人に合致する。
計略か必然か
(彼女の計算?)(彼の想い?)