「漣伎さーん、部屋決まったんで案内しまさァ」 「…ッお、沖田さん。部屋の中でバズーカ打たないでください。ってか、バズーカぶっ放してる…じゃなかった、バズーカをあちこちで使用していらっしゃるなんてただの噂だと思っていたのに本当だったんですね」 「すいやせん。大丈夫でした? 山崎狙ったんですけど巻き込んじまったみてェで」
煙の中で黒い影がゆらゆらと揺らいでいる。相手の顔は見えないがどこからどう考えても反省している気配は無く、恨みをこめてケホッと一つ咳をする。煙が沈むにつれて見えてきた彼の顔は、やはりしたり顔で。
「もう…なんとか大丈夫でしたけど。退、無事?」 「……」
退はひっくり返ってボロボロになった畳に顔を埋めていた。バタバタと足が空を泳いでいたから、その片方を引っつかんで引きずり上げる。土埃にまみれた顔があまりにおかしくて、ハンカチを渡しながら噴き出してしまった。あははは、と自分の笑いが部屋に響く中、退と沖田さんは仰天した顔で固まっている。
(ああいけない)
ついつい素になりそうになるのを我慢していたのに。やっぱりこの任務は自分には向かない。 元に戻るのが早かったのは沖田さんで、彼はなんだか酷く嬉しそうに私の手を取って突然、総悟でさァ、と言った。じゃあ総悟君、と呼ぶと、彼は鼻歌を歌って退を蹴り飛ばす。そのままぐいと引っぱられて、私は総悟君と退を交互に見ながらも客室を出ざるを得なかった。ちょ、総悟君!? とやはり素で叫んでしまったのはもはやご愛嬌。どうとでもなれ。
「やっぱり漣伎さんの部屋は俺の隣にしやしょう。土方コノヤローに丸め込まれちまったんですが、今なら本気で交渉に行けまさァ」 「…因みに、どこが私の部屋の予定だったんですか?」 「……」
ピタッと総悟君が足を止めてこちらを振り返った。ずいと寄せられる顔を見ながらわあ可愛いと思うのは少し世間からはずれているかも知れない。ちょっと唇が不満げに突き出ているところがなお可愛い。ただ、何秒もこちらを凝視したままだから流石にどうしたの、と訊いてみると、
「タメにしてくだせェ」
…と言われた。
ごめんなさい晋助 (佐幕派に凄く可愛い弟ができそうです)
九条家の蓮華と、鬼兵隊の蓮華と、真選組の蓮華。書き分け忙しい… '10.08.10
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