イクシオン。それは伝説史上最初の専属殺人者

□Psychological Maze
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「ライラ、好きさ」



《 ちょっとした心の迷路の一部分 》





Psychological Maze
(心理的迷路)7:最終章






あなたの、その、悲しそうな笑顔に、胸が締め付けられた

何故かわからない

でも、私の中で、何かが、誰かが、泣いている

何故かわからない

理由も、答えも、見つからない

何故此所にいるのかも
何故存在しているのかも

私が誰なのかも
ライラが誰なのかも

全部…



「ライラ…、どうしっ…
「分からないの!!」



静けさを取り戻した、科学班の部屋で、悲痛に響くライラの声



「私は誰なの!?
“ライラ”なの!?

…“私”って、どこにいるの…?」



ポロポロと涙を流すライラ
ライラは、問い掛けるように、俺を見た



「お願いだから、そんなに悲しそうに笑わないで…」



俺は馬鹿さ
本当に一番苦しいのは、辛いのは、ライラじゃないか



「君は、ライラさ。それに間違いはない。
でも、君は君さ。
君っていう1人の人間が、ライラっていう名前なだけさ」



あなたは真直ぐに私を見つめてきた

“君は”

そう、強調されたことが、仄かに嬉しい



ライラを守るのは、今も、これからも、俺だけと、かたく誓ったじゃないか

自分自身に

何がブックマンさ
んなこと関係ねぇ

ライラが好き

それが、唯一の真実であればいいんさ

ブックマンへの迷いも、ライラとは関係ねぇ

自分が人間で、愚かな種族であることを認めたくなくて
自分が人間を、愚かな種族を、好きになることを認めたくなかったんだ

自分だけは違うと思いたくて
俺は、現実を受け止めたくなくて

全部

全部

戦争のせいにして

挙句の果てに、ライラから逃げようとしたんさ



「俺は」



俺とライラの視線が絡み合う

逃げようとしていたのも

変わろうとしていたのも

俺だ



私とあなたの視線が絡み合う


「俺は、ライラが好きさ」



体中が、これでもかって、熱くなる



不意に涙が零れた

胸が痛くて
心が痛くて

頭が…痛い…

ドクンドクンと脈打つように


「俺のこと、忘れちまっても、好きさ」



痛い…




















(大丈夫よ、ラビ)

(ラビは何時でも格好いいよ)

(ラビ!!いってきます!)

(ラビ!好きよ)




目の前に、沢山の映像が流れる

目から、沢山の涙が零れ落ちる










「……ラビ………」










逆転していた砂時計が元に戻り始める

砂は本来の流れを取り戻す
止まっていた時間が動きだす









「…ライラ?」



涙を流しているライラは、突然、俺に抱き付いてきた



















「ラビ、ただいま」










不意に、涙が零れた



無意識に、お前を抱き締めた


強く



強く




















「ラビ、



愛してる…」




















この話は

ちょっとした心の迷路の一部分の出口

全ての出口なんてものじゃない

それでも、俺達は歩き続けなければいけない

迷いながら、苦しみながら、
出口を見つけなきゃいけない
大嫌いな戦争も、迷路の一部分

乗り越えなきゃいけないもの

愚かな種族であることも、認めなくてはいけない事実であり、迷路の一部分




















人生は迷路の集合体で、俺達自身のたった一つの物語なのさ











完結
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