イクシオン。それは伝説史上最初の専属殺人者

□Psychological Maze
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「俺は、ブックマン後継者」



「そんなに、悲しそうに笑わないで」




《 さようなら? 》






Psychological Maze
(心理的迷路)6






教団内に鳴り響く警戒音
木霊する悲鳴の数々

俺は、アクマのもとへ向かった
此所にいる限り、俺はラビとしての仕事をしなければならない



「ラビ」



じじいが曲がり角からでてきて、一緒に走ってる
俺は視線だけじじいに向けた



「我々の目的を忘れるな」



「…わかってるさ」



目的…

それは歴史を綴り続けること
歴史を語り継ぐこと

そのために、
俺は死んではいけない















目の前にいるのは、

…何…?

見たこともない生き物
これは生き物と言えるの?

心臓が
ドックン ドックン
と、跳ねる
血が騒ぎ出す

懐かしい…、感覚



「ライラちゃん!!逃げるんだ!!今の君では無理だ!!」


足が、
動かない

動きたくないと言ってるの
こんなに怖いのに

頭が
ドクン ドクン
と脈打つように痛いの

すごく、コワイ

でも、心地いい



「女、貴様はエクソシストか?」



「………

…わ、わからない…。」



わからない

私は誰なの

何故此所にいるの
何故存在してるの

何のために

わからない
わからない
わからない



…何もわからない

怖い

私の頬を、冷たいものが伝った
何処にも、“私”がいない



「わからない?」



「ライラちゃん、逃げるんだ!!」



コムイは走りました



「つまらない女だ。泣いて叫べばまだ可愛げのあるものを」



アクマと呼ばれる生き物は、手を振り上げた

コムイは叫ぶ

でも、私の目には何も映らず
耳からは何も聞こえない

目の前の恐怖より、怖いものがあるから

その中で、唯一見えるものは、聞こえるものは



悲しそうに私の名前を呼ぶ、
…赤毛の人だった











「なにやってんのさ。
ライラ…」



悲しそうに私の名前を呼ぶ、赤毛の人

あ、と声を漏らす私

背中…
私を見つけてくれた人の背中広く、頼もしい背中
ずっと、私を守ってくれた背中

えっ…
ずっと?

あれ…?



あぁ、頭が割れる










アクマを目の前に立ち尽くして、静かに涙を流すライラでも、その目はアクマを映してはいない

俺は走り出すコムイに制止をかけて、ライラのもとへ向かった



「なにやってんのさ。
ライラ…」



そんな目で俺を見るなよ
俺は槌を片手に握り締めた
もう片方の手は、ライラに差し延べて、ライラを立たせた

アクマは、じじいが相手してる


「早くコムイのとこに行くさ」



俺はそう言って、ライラの背中を押した

いつもの笑顔を向けて


そして俺は、アクマと向き合った



俺はブックマン後継者
さよならさ、ライラ




俺がそう思った時、アクマは倒れた



アクマを倒したのは、じじいの針でも、俺の槌でもない

俺の後ろから飛んできた矢だった



「……ライラ…??」



俺は呆然とライラを見た

記憶を失った今のライラでは、イノセンスとのシンクロは不可能な筈なのに

でも、ライラ自身も、イノセンスを片手に呆然としている



「ラビ…」



ライラは涙を流す





「そんなに、悲しそうに笑わないで…」










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