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□駆け引き
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「別に、好きでもないわ」

そう私が言えば、貴方はそれはそれは迷惑そうに理解不能だといった様子で眉根を寄せた。

「私も、好きでもありませんが。呼び出しておきながら用件は無い、なんて言わないで下さいね」

ため息をつく貴方が大層美しく見えるのは、きっと私の目の仕様だろう。

「あら残念。好きじゃなくて愛してるとでも言おうかと思っていたのに」

「用が無くなってしまったわ」と私が微笑み掛けると、貴方も何が可笑しいのか笑い出した。

「面白い人ですね、貴女は」
「少しは興味を持ってくれたかしら?」
「ええ、私と同じ匂いがしますよ」

その禍々しい程に妖艶な笑みに、ポーカーフェイスを気取っていながらも心臓は五月蝿い程に高鳴っていた。
かつ、と靴が音を立てる。少ししかない距離が更に縮まる。
貴方は私の目の前数センチで止まって私を見下ろした。


「私を貴女に溺れさせてみせて下さい」


艶っぽい声でそう囁かれ、受けてたつ、と私は微笑んだ。

降ってきた口付けに、歓喜で背筋が粟立つ。





私が貴方に溺れ切る前に貴方を引き摺り込まなければ

私は抜け出せなくなる


甘美な毒沼から






090506

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