黄金の契約 月光の宝冠
□第一章
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そこは暗かった。空も地面も木々も全て黒色をした、見渡す限りの黒。ただ唯一光を放っている月が黒い世界を青く染めようと淡く輝き照らしている……そんな闇が支配する世界。
私はそこにいた。
私は真っ黒な木の上で誰かを待っていた。この木で待ち合わせをしているときは少し早めに来て、こうして木の上で待っているのが私の習慣になっていた。
しかし、いつもは時間通りに来る待ち人は、今日は待ち合わせの時間を過ぎてもなかなか現れない。
けれど結構な時間を待たされているというのに、私は何故だか全く嫌な気持ちにはならなかった。幼い少女の頃からのばしている長い髪もリズムをとりながら、楽しそうに右に左に踊っている。
それはやはり待っている相手が彼だからだろうか。
しばらくすると何者かが脚の短い草を踏む音が近づいてきた。
けれど、音はすれど気配は感じられない。
普通なら訝しむところだが、あいにく私には心当たりがあった。綺麗に気配は消すくせに、わざと音を立てて歩くようなひねくれたことをする奴なんて一人しかいなかった。
その聞きなれた音を聞き、木を降りて音のする方へ駆け寄る。
案の定、そこには私が待っていた彼がいた。