Juliet castle
□きっかけは手作りから
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阿部くんの洗った食器の最後の一枚を拭き終えて棚に戻すと、先に終えていた阿部くんがソファーでうたた寝していた。
「阿部くん・・・?疲れたんだね」
うちに泊まりに来た阿部くんが慣れない家事に右往左往する俺をみかねて、夕食まで作ってしまったのだった。
洗い物までやってもらって・・・悪いことしたよ。
阿部くんの寝ている横にそっと腰掛ける。
「ありがとう、阿部くん。今日のお礼、何かするよ」
寝ているから、聞こえてはいないけれど。
「寝てる人間に礼を言ったって、分かってもらえないぜ」
眠ったはずの阿部くんが、こっちを向いて言う。
「なん、だ・・阿部くんてっきり寝てるのかと」
ははは、と笑った。
「三橋、今日メシ作った礼に何かしてくれるんだろう?」
「も、もちろん!」
「三橋が、欲しい」
「え?」
「三橋が好きだから、三橋と繋がりたい」
「ふえっ?!」
阿部くん、今なんて・・・?
「ダメ、か?」
「そんなこと、ない!」
阿部くんが身を寄せてきて、二人の顔がだんだんと近づく。
息が触れ合うほど近づいた時にまた、
「お前が好きだよ」
と言われて恥ずかしさで目を閉じた。
次の瞬間、唇に柔らかな感触を感じて、これは阿部くんの唇なんだと理解する。
体を正面から抱きすくめられ、阿部くんの胸板へと包み込まれた。
「抱いて、いいか?」
「うん、僕も阿部くんが好き、だよ」
小さな声で、告白した。