Juliet castle
□きっかけは手作りから
3ページ/5ページ
*********
夕食の片づけをしながら、台所に立って洗い物をする阿部くんの後姿をふと見つめる。
話があるって、いったい何についてなんだろう?
「三橋、食器拭いてくれるか」
阿部くんが振り向いて俺に言う。
「えっあ、う、うんいいよ!」
手に持っていた麦茶のボトルを冷蔵庫に戻し、阿部くんの横に立つ。
「オレ、お前にいわなきゃいけないことがあるんだ」
左隣の阿部くんと目が合って、思わず目を伏せてしまう。
どうしたの、阿部くん。
そんなに改まって。
「お前とバッテリーになれて、本当に嬉しいよ」
流し台の水音が意識の外へ追い出され、阿部くんの瞳に見つめられる。
「お、俺こそ、阿部くんとバッテリーになれて嬉しいよ!
そうじゃなきゃ、ダメなピッチャーのまま、だったよ」
手に持った白い皿をしまって答える。
「それが言いたかったんだ。悪ィな、びっくりしたか?」
阿部くんはそう言って洗い物を再開してしまったけど、俺にはもやもやが残った。
本当はもっと言いたいことありそうなのにな。