Juliet castle
□きっかけは手作りから
2ページ/5ページ
「舌、平気か?」
向かいの席に座った阿部くんが身を乗り出してくる。
「ふ、ふん・・・」
熱々のグラタンをそのまま一口食べようとしたら、こうなった。
「火傷してないか、見せろよ」
無理矢理口を開かれて口内を覗かれる。
「平気、みたいだな。気をつけろよ、ったく」
ドジなんだから、と悪態をつかれてしまう。
間が気まずくなり、傍にあったコップの水を飲み干して阿部くんの様子を見る。
「あっ、阿部くんのてっ、手作りだから冷めないうちに食べようと思って・・・っ」
「三橋・・・」
今日は俺の母さんも父さんも出張中だから、阿部くんを招いて夕食をとっていた。
しかも阿部くん手作りのグラタン!なのである。
それを無駄にしないために、ちょっと焦ってしまっていた。
「俺、すっごく嬉しくて・・・」
「・・・・」
「阿部くんて、何でも出来るんだね。グラタンなんか俺作れないよ」
「・・・・・だからな」
「?」
「三橋の、好物だからな。練習してた」
それって、阿部くんが俺のこと・・・・・
「三橋、食った後に少し話がある」
いつものように素っ気無く阿部くんが言って、会話はしばらく途絶えた。