Juliet castle

□隣にいさせて
1ページ/1ページ


がたん。

何の前触れもなく準太の自転車に悲劇が起こった。

「あれ・・・?」

青信号になったので走り出そうとして踏んだペダルが回らないのである。

「なぁにしてるんスか、準サン」

隣の利央が準太を振り返る。

「ペダルがなんか、調子悪いみたいで動かねえんだよ」

「今まで普通に動いてましたよね?」

「だよな?」

思わず顔を見合わせる準太と利央
準太は自転車から降りて、原因を探ってみる。

「あ。」

ギアチェーンに布がはさまっていた。
先程通った小道に落ちていた布を踏んづけた拍子に、どうやらやってしまったらしい。

「とれそうスか」

(もし、とれなかったら。
準サンと長くいられる口実つくれないかな。)

利央は一瞬考えた。

「なんかもうこの布ビリビリだから無理だな」

はあ。
準太は深い溜息をついた。

「どーしろってゆうんだ・・・・」

充分歩いて帰れる距離に家はあるのだが。

(この自転車をどうしろと?)

準太はがっくりと肩を落とす。
一方、利央は良心と戦っている。
悩んだ挙句、

「おっ、俺の後ろ乗ってきます?」

家まで送ります!と利央が宣言する。
下心も親切心も五分五分のいい勝負。
行け俺!

「この角の裏って自転車売ってるじゃないスか。だから、修理頼めますよ?」

めずらしく妙にしっかりしている利央である。
準太はそんな利央の葛藤には気がつかず。

「自転車は預けちゃうとしても、それじゃあお前に悪いよ」

結構な重さなんだぜこの荷物とプラス俺だぞ、と準太は遠慮する。
そりゃあ送ってもらえるなら楽なんだけどさ。

「んなことないっ・・・俺は準サンを乗せて走りたいもん!」

利央は反射的にそう言っていた。

「ほら準サン、とりあえず自転車を修理に出しに行きますよ!」

ぽかんとしている準太に一喝して、利央は先に自転車屋に行ってしまう。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ