anoter
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「ごめんな、汚い家で」
そう、困った顔で言う。
「学校外でも私と一緒なんて嫌だろうが、我慢しろよ」
と、苦笑して言うから嫌がるそぶりをした。
「遊びたい時は何時でも出かけていいからな」
俺は、ここにいたい、と主張したがる自分を抑えて笑った。
「ゆっくり、寛げばいいさ」
寛ぐことはできない、と思った。
毎夜、目をつぶると考える。
炎に包まれる夢のこと。
夢か現かもわからずに、只隠れていた日のことを。
忘れたつもりはつもりだけ。
目蓋の裏にはあの日の紅。
鼓膜に残る、あの日の声。
体に残る、あの日の熱。
失うことに恐怖を覚え、
欲する事に癒しを覚え、
俺のものになる何かを必死で探してる。
布団の中で眠りにつく前、
「何でも言えよ」
とあんたは言った。
そんなことを言うもんだから。
「俺のモノになってよ」
と、
その呟きは虫の音に消されて。
多分聞こえているけれど、
何も言わない、
優しいセンセイ。
*