anoter

□眼
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冷たい手が触れてくる。
骨ばった細い指は青白い。
頬を撫でるように触れてくる手のひらは大きい。

真似て手を伸ばすとその手を取られて下ろされる。
そうだね、あの人はこういう事はしないね、と眼でいうのを無視しているのか気付かないのか(きりちゃんのことだからきっと前者)頬においていた手を首元まで下ろす。
鳥肌が立ったのを笑うその満面の笑みは、あの人と自分の前でしか見せないのだと自慢にもならないことを思って自己嫌悪。
その屈託のない笑みはまるで猫。人懐っこい顔をしている。
三日月になった眼は誰を見てるの、なんて今更聞けるわけもなく、つられて笑ってみる。
きっと酷く不細工な顔になっているに違いない、それは悋気。
比較的整っている顔が近づいてくるのを黙って眼をつぶって待つ。
唇に乾いた感触と熱。
すぐに離すのは癖。
もう一度触れてくるのを受け止めて、体重を掛けられるままに寝転がる。
こういうとき、酷く切なくなるほどに優しい顔をする。
その優しさは私の為じゃない。
知っているのに知らない振りしてされるままになってみたりする。
何でだと思うの。


いいんだ、これでも。



今 、 君 の め に う つ っ て る の は 私 。






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