銀魂

□特別
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学校という物は、何もかもが平等でなくてはならない。
教師は、生徒のために働き、贔屓など言語道断で、学校という囲いの中の人間は平坦で平和な学校生活を送る。

と言ったら、担任教師は皮肉そうに笑った。


つまりは、生徒は只の個性のないお人形さんである。
つまらない学校生活に或る意味取り憑かれている。
常に起こる競争に巻き込まれて流されて、置いていかれる者もあるのに、気付かない振りをする。
こんな横暴な事、これ以外ない。

言う桂の頭を撫でてやる。


不信感を抱いたらそこで終わり、だから気付かない振りをしている。
本当は、誰もが学校を言う檻の外へ出たいと切望しているのに。
言うことは一緒、楽だから。
楽だから此処へ留まりたい、そんなの嘘だ。
檻の外は自由だ。
だからその自由へ放り出された時、縛られ続けていた俺たちは何をして言いのか解らず、未知への恐怖で一杯になる。
だから、檻の外へ出たくない、否、出られないのだ。

桂は、言いながらもレポートを打ち続けている。
国語科準備室内のパソコンの前を陣取っている桂の横で、苺牛乳を啜る。


課題の締め切りに追われ、試験に受験に追い詰められ、必死になっている。
そんな滑稽な事があるか!
有意義な学校生活など存在しない。
何故ならば、学校と言う囲いの中にいる人間は皆、孤独だからだ。
一人で戦い、一人で世界を歩いている。
社会という、外の世界に生きる者たちも、元はこの学校と言うものに囚われていた。
だからだ、社会のこの寒い、冷たい風は、そんな者らによって作り出されてしまったのだ。
学校と言うものがなかったら?
もちろん仮説であるが、世界は丸く暖かいものになっていたかもしれない。
いや、学校だけではない、人間を括る囲い、全てがなかったら、きっとそうなっていたに違いない。

レポートを打ち終えて、プリンターに出力を開始する桂が、教員机の上にばら撒いてあるチョコレートを一つ口に入れた。
肩でも揉もうか、と銀八は昼食であるエクレアを頬張った。


何故、こんなにも不便で不自由な必要悪があるのだろうか?
何故、皆この檻から逃げようとしないのだろうか?

印刷を終え、銀八に提出する。
ページ数は規定通り。
合格、と食べかけのエクレアを桂に差し出す。
素直に齧る桂に問いかけた。


じゃぁ、なんでお前はこの檻から逃げないの?


銀八の口の端に付いていたエクレアのカスタードクリームを舌で舐め取って、言う。


檻の中も捨てたものではなかったからです。


ゆっくりとした口付け、口内にクリームの香りが拡がった。





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